面白かった。
難解かつ単調な作品が並ぶのですが、
不思議なことに面白いのです。
一人称の「私」は作者に限りなく近い。
横光利一の弟子だけに、
私小説を超えた虚構も上手に混じる。
現実と虚構の間を上手に作品は泳ぎ、
読者に困惑に近い読後感を与えるのです。
昭和30年代の庄内地方。
貧しい田舎であり、
豊かな大地でもある、
東北の片田舎を舞台に、
「私」が土地や人々を観察し、
自らの生涯を顧みる。
それが大げさでなく、
心理の小さな揺れを通じて語られる。
おまけに文体はバタ臭い。
欧米的なスタイリッシュな簡潔さで、
観念的なのだ。
「鴎」という短篇がやたらかっこいいと思ったのです。